ライ麦畑で土下座して

うっすら人殺し。映画やドラマの感想など。

グロいねーと思ってたらR15でした。男3人の友情というよりかは連帯感が心地いい。映画「セブンサイコパス」ネタバレ有感想

あくまでもどこまでもフツーーーーーーーーな人間のコリン・ファレルを軸にして実はサイコな友人、それから肝っ玉の座ったじいさんと、非現実へ転がり落ちていく。

 

 

強烈な存在感を放つビリー・ビックルさんは概念的なものだと捉えた方がいい。何も残さないけどいつまでも覚えているはた迷惑な「何か」。少なくとも人じゃない。強いて言うなら災害なんかが1番近いんじゃないか。

 

 

彼がNO.1であり、NO.7であるというのはあまり意外ではなかった。話の流れを見るに監督は最初から意外性なんて狙ってないんだろうけど。正体が謎な人物、一体誰なんだ......!といってもすでにそろっているキャラクターで見れば消去法で彼しかあり得ない。数分前までセックスしようとしていた女を撃つくだりは清々しいほどのクズかつサイコっぷりで笑ってしまった。でも、まあ、こんなやつでもツーショットとか撮っちゃうような親友がいて(しかも写真を部屋に飾ってる)親友の仕事は成功してほしいと願うわけだ。人間なら誰でも願うようなことをぶっ込んできて、サイコ野郎を理解不能な人知を越えたキャラクターにはしないのがマクドナー流。一生ついてくよ。

 

 

バランサーとも言えるクリストファー・ウォーケンのハンス。達観っぷりは歳のせいだけではないのだろう。日本に住む自分達には想像もつかない、黒人と白人が結婚するということ。彼の座った瞳はさまざまな困難を乗り越えて来た証なのだ。若干ご都合主義臭のするハンスの考えたベトナム人のストーリーは、その素人っぽさが温かみを感じた。「娼婦がベトナム語を話させる」というのも全ては実在する人物が考えていた夢オチというのも、実に荒削りだが、そこがまたいなくなってしまったハンスという人間の性格を滲ませている。決してバッドエンドではない。このぎこちない救済の手が、このやりきれなさに満ちた話の中に差し込む一筋の光といっても過言ではない。

 

 

エンディングまで派手な部分はひとつもない。クライマックスらしいクライマックスもないが、ラストシーンは強烈だった。うさぎを抱えたサイコパスがマーティに約束を破ったなと電話をかける。マーティの口ぶりから「何か」を察したサイコパスはそれ以上追及せずに電話を切る........。静かなラストだが圧倒的だった。脚本セブン・サイコパスをめぐる騒動は表にはでないものだが、一般人であるマーティからすれば壮絶なものだろう。

 

 

同時に、他の人々にも到底理解できる体験ではない。マーティ本人ですら呆然としているのを隠しきれていない。ただただ親友や信頼できる仲間を亡くした喪失感に包み込まれ、何もできない。うまく説明しようにもどうしたらいいのか.....無理にでも説明しようとすればいわゆる「パワーワード」の連続になるし....ありえない非日常にいつのまにか足を踏み入れていたことを今更になって気づく。

 

 

そこに共感できるのはサイコパスだけ、と言う身も蓋も希望の光もないエンディング。災害によって傷つけられた家を災害が建てなおしてくれたとでも言うような。結局災害なことには、サイコパスなことには変わりない。共感されても困る。

 

 

シュールな終わり方だけど、印象には残った。主人公のところに何も残っていないのがまた、災害が通り過ぎたあとのようで。決してしんみりしてはいけない(死んだのは基本犯罪者)がそう言う雰囲気を作ろうとしているのも最後の最後に笑えた。個人的に大好きです。