ライ麦畑で土下座して

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なんかぜんたいてきにふわっとしている。映画「キャメロットガーデンの少女」ネタバレ有感想

キャメロットガーデンの少女はどう見たらいいのかわからない映画だった。純真無垢なる10歳の少女の視点から見た、大人の傲慢さを描きたかったのだろうけど、脚本が徹しきれていないように思えた。中途半端な感じが目立った。荒削りがいい方に働く場合もあるが、この題材と絵面は(特にそうするなら)丁寧に扱わないといけないだろう。

 

 

序盤にて、少女が周囲に馴染めないのもただの不思議ちゃんなのか、愛想笑いができない性格なのかいまいちわからず、言動の意味が解釈しずらい。トレントは純粋な青年と記載があったが、その割には家に女の子を連れ込んだりと年相応さがやはり序盤にあって、少女と仲良くなるくだりもいまいち入り込めない。

 

 

ただし、役者の演技は文句なし。ミーシャ・バートンサム・ロックウェルはもちろん、脇を固める人々もよかった。特にサム・ロックウェルは「トレント」という視聴者にとっては曖昧なキャラクターを危うさと儚さを醸し出してなんとなく納得してしまう気迫を持って演じきっていた。

 

 

最後のシーンはもっと上手くいくだろうという感じ。少女がずっと黙って従属してきた大人代表の父親を撃つところはカタルシス.....生まれないのだ。銃が車にあることは伏線で示されていたものの、どうも少女の追い詰められ具合が画面の外に緊迫感として伝わってこなかった。どれもこれもストーリーの運びと演出が盛り上げるところをわかっていないせいだ。結果として随分と平坦な、なんの感情も動かされないシーンになってしまっている。

 

 

余談だが、個人的にこの映画はパラサイトに似ていると思っていて、銃で撃つくだりは完全にパラサイトのラストと重なった。パラサイトにおいて、ラストはてっぺんまで登りきったボールが一気に転がり落ちていくようで、最高に盛り上がるシーンだった。対してキャメロットガーデン。製作陣の狙いは銃で撃つシーンをあれくらいの盛り上がりにしたかったのではないか(どう考えても1番盛り上がるのはここ)。だとすればう〜ん、残念極まりないですね........

 

 

トレントが車で走って行くシーンは、少女の空想だと考えている。木の上にのぼってそっと目を閉じ青年のぬくもりを感じながら「そうだったらいいなあ」と脳裏に巡らせる願望。実際は悪夢が待ち受けているのだけど。息子が殺人犯になったら親はどうなるのだろうか。年金ももらえないだろう。そして少女は人を銃で売った子供の烙印を押されて一生を歩んでいく。少女にはそんな未来、到底想像もできないのだろうけど。

 

 

少女の残酷さ、子供ならではの考えのいたらなさが招いた惨劇は、胸を締め付けられるような切なさがあった。ラストシーンのあと、二人が再会しても、一緒にドライブしたり鶏を捕まえた時のような関係には戻れない。制作陣が視聴者にそう思わせたかったのかどうかは知らないが………